Vol.25 安心・安全のニンジンを目指す

ニンジンは食卓に彩を添える常用野菜

 

ニンジンはジャガイモ、玉ねぎと合わせ常用三大野菜のひとつとされ、栄養価の高い緑黄色野菜です。
きれいなオレンジ色が、サラダ、煮物、炒めものなどに色を添え、大きな皿のメインディッシュの付け合わせとして魚や肉を引き立たせます。
また、ジュースやスイーツの主材料にもなる万能の食材であるニンジン。

 

どの家庭にも買い置きがあり、どこの八百屋さん、スーパーでも見かけます。
ニンジンの大生産地は北海道や千葉、徳島、埼玉、茨城などですが、くにたちでも、ニンジンは作られています。
今回取り上げる佐伯渡さんの作るニンジンの魅力は、減・無農薬に努め、手間をかけて作られていることです。

 

 

ニンジンと人参

 

ニンジンは、仮名でも書きますが、漢字では「人参」。
ニンジンが「人参」と書かれるわけは遠い昔にさかのぼります。
奈良時代に朝鮮半島から、根に薬効のある薬用植物が伝えられました。
その薬用植物は“ウコギ科”に属し、枝分かれした根の格好が人に似ているため「人参」と言われました。

 

でも、私たちが食べているニンジンは、セリ科の植物で、原産地はアフガニスタン。
カロテンをたくさん含んでいることで知られています。
ニンジンの英語名は“carrot”ですが、カロテンはこの英語名に由来しています。
かつては人参と記された薬用植物は、いまでは「朝鮮人参」や「高麗人参」とされています。

 

 

佐伯渡さんのニンジン

 

ニンジンは年2回栽培されますが、いまや全国で生産され、各地域の気候に合わせて収穫されるので、日本全体では周年栽培されているともいえます。
秋の終わりから冬に出回る冬ニンジンは関東地方でもたくさん栽培されます。
谷保の農家さんも、この時期に栽培し、販売しています。

 

秋・冬ニンジンの収穫が間近になった10月に、谷保のママ下の近くでニンジンを栽培されている、佐伯渡さんを訪れました。

 

佐伯さんの畑では、大根やカリフラワーなども栽培されていて、その一角がニンジン畑です。
今年作られているのは4品種で、写真の右から順に「向陽」「金美」「金時ニンジン」「ベーターリッチ」です。

 

写真1:佐伯さんが今年作ったニンジン各種

 

 

この写真のニンジンは生育中で、まだ十分に太くなっていません。

 

「向陽」は、“ニンジン”といえばだれもがイメージする、もっともポピュラーな品種。
「金美」は黄色が鮮やかでが、スティックとして食卓を飾るのにふさわしい種類です。
「金時ニンジン」は東洋系で赤い色が強く、長く伸びる京野菜のひとつ。
「ベーターリッチ」は、ニンジンの栄養素を代表するベーターカロテンが豊富な品種です。

 

ニンジンはまず根が伸び、その後で太るそうです。
収穫期の12月には、写真2のように太ったものになります。
この写真は、12月初めに直売所に並べられるときの、丸々と育った「向陽」です。

 

 

写真2:大きくなって店頭に並べられるニンジン

 

 佐伯渡さんのこだわり

 

佐伯さんは、できるだけ農薬を使わない努力をされています。
ニンジン畑にしゃがんでいる佐伯さんを撮った後、ニンジン畑を写そうとしたら、とまどわれてしまいました。

 

理由は、農薬を使用しないため、虫に食われるなどして草丈が揃っておらず、ニンジン畑を被写体とすると貧弱な畑になるからでした。
次々に生えてくる雑草取り。
ニンジンを好むアゲハチョウの幼虫の捕獲。
もう何十匹も手で駆除したが、それでも一部は食われてしまうし、農薬をかけないので、葉の一部がどうしても「うどんこ病」に罹って貧弱に見えてしまうなど、病虫害との戦いは話が尽きません。

 

ニンジン畑の脇にある大根畑には、「よとう虫」の雌のフェロモンを入れた容器がぶら下がっていました。
雌のフェロモンに誘われて容器に入った雄は逃げ出せず、雄を失った雌は産卵しないので幼虫が生まれないという仕組みです。
農薬なしの「よとう虫」対策。
これこそ、農薬に頼らずによい野菜を作ろうという佐伯さんの意気込みを物語っています。

 

病虫害という自然と戦って、見事な野菜の生産を目指す佐伯さんには、もうひとつの大敵がいます。
収穫直前の野菜を盗む人間です。
手間を掛け、丹精を込めて育てた野菜が盗まれてしまう無念さを想うと、畑からの盗難が無くなることを念じざるを得ません。

 

 

写真3:ニンジン畑を前にした佐伯渡さん

 

 

長旅を経て日本に伝来したニンジン

 

私たちが食べている“セリ科”の植物、ニンジンの原産地はアフガニスタン。
原産地では、黄色、黒色、紅紫、赤紫など様々な色のニンジンがありました。
この“セリ科”の野菜は品種改良を加えられながら、2つのルートを通り、はるばる日本に伝えられました。

 

1つは中国で品種改良されて16、17世紀のころに日本に伝えられた東洋系のニンジンで、今も作られているのは、赤色が強く「金時ニンジン」という名の、京野菜として知られているニンジンです。
写真1では、左から2本目の赤色が強く、細長いニンジンがそれです。

 

もう1つのルートは、オランダ、フランスで品種改良され、アメリカを通って19世紀に日本に入ってきた西洋系のニンジンで、オレンジ色が主です。
写真1では、右側の2本と、最も左の1本がそれです。
一番右のニンジンは「向陽」という品種で、もっとも代表的なニンジンです。
私たちが、ニンジンの色として思い浮かべるオレンジ色は、「向陽」の色です。

 

八百屋さんやスーパーで、オレンジ色のニンジンの隣に紫赤や黄色のニンジンが並んでいるのを見かけます。
オレンジ色のニンジンに見慣れた私たちは、おや、珍しいニンジンがあるな、最近、品種改良されたのかなと思いがちです。
でも、原産地のアフガニスタンでは、ニンジンは黄色や赤紫、黒色が優勢だったようで、原種に近い色を珍しがっているのかもしれません。

 

変わった色のニンジンを見たら、ニンジンがたどってきた遠い道のりに思いを馳せるのもよいでしょう。

 

<直売情報>

今回取り上げた、安全、安心にこだわる佐伯渡さんのニンジンは、次のところで販売されています。

 

・個人の直売所(直売所マップNo.1)

・.東京みどり農協/富士見台支店駐車場(直売所マップNo.11)

・.北市民プラザ駐車場(直売所マップNo.15)

・国立野菜の販売店「しゅんかしゅんか」(直売所マップNo.16)

 

直売所マップはこちら

 

 

(古川)