Vol.10 脈々と つなぐ 府中用水

谷保天満宮の裏から湧水に沿って南に下ると、目の前に広がるのは田園風景。夏のある日、田んぼの上をたくさんのトンボが飛んでいます。田畑のまわりを流れる用水には、この日もザリガニ釣りなどに来た子供たちの姿がありました。 くにたちの南部は農業の盛んな地域です。今回は南部一帯を流れる「府中用水」について、その魅力をご紹介したいと思います。

8月4日に「くにたちはたけんぼ」で開かれたイベントの様子。子供たちが用水の生き物探しをしました。ザリガニやヤゴ、ドジョウなど、様々な生き物がいましたよ。なんと鯉の姿も発見。みんな夢中になって追いかけました。

「用水」を知る

「府中用水」は江戸時代初期に、内陸地に水を引き込むため多摩川の氾濫跡を利用して作られました。現在でも梨園や田んぼなどの農業用水として使われています。水は水門で管理されており、毎年5月の下旬から9月末頃までは水が流れています。

(国立3中付近の用水)くにたちの中を流れる府中用水は青空の下、道路や民家、田畑の横を小川のように流れていますよね。これを「開渠(かいきょ)」といいます。最近では「暗渠(あんきょ)」といって、用水の上にふたをしたり道路を作ったりして、まわりから用水が見えないようにしている地域も増えています。
「疎水百選」をご存知ですか?地域の生活に根付いた用水であり、また美しい景観を保ち豊かな生態系を育んでいる用水が、全国から選ばれます。「府中用水」は東京都で唯一選ばれました。

用水で生き物探しをしよう

府中用水には、水が入ると同時に多摩川から様々な生き物がやってきます。日差しが届くので水草も育ち、ゆったりとした流れの用水は、生き物たちにとって住みやすい環境なのです。 また年間通して湧き出すママ下や谷保天満宮の冷たい湧水が用水と合流し、豊かな生態系を育んでいます。

下谷保の用水で捕まえた生き物たち。よく覗くと「ドジョウ、アメリカザリガニの赤ちゃん、ヌマエビ。小魚」がいます。生き物たちを捕まえて持ち帰った場合は、途中で逃がさず、責任を持って最後まで飼うことを心がけましょう。
谷保天満宮下の湧水の流れの中で、生き物探し。ザリガニやドジョウ。ヤゴが見つかりましたよ。とても冷たい水に子供たちも「気持ちいい~」。ご近所の方が野菜や飲料を冷やしていることもあります。

用水を守る 

海の日。市民ボランティアの方たちの清掃風景。
海の日。農家の方たちの清掃風景(下谷保地区)。

府中用水を利用し農業を営む方々が集まった「府中用水土地改良区」組合員によって、年に2回用水の清掃がおこなわれます。しかし農家の減少と共に組合会員も少なくなり、用水の維持管理が年々困難になっているのが現状です。


そこで7月15日海の日に行われた今年2回目の用水清掃では、国立市が市民ボランティアを募り、初めて6名の市民の方が清掃に参加しました。用水の清掃は年に2回だけではなく、日頃から農家の方がそれぞれに行っています。特に用水へ捨てられた空き缶などのゴミ拾いは欠かせません。用水の流れが悪くなり、田畑へ水が入らなくなってしまうからです。


こうした農家の方々の努力によって、これまで用水をめぐる環境が保たれてきたといえるでしょう。私たちも、用水の維持のために、そして、生き物たちの住む希少な場所を未来に残すためにも、何が出来るか、考えていきたいですね。


「ハグロトンボ調査隊」用水やその周辺(ハケの森など)で生息するハグロトンボの生息状態を調べています。継続して調査することで、周辺環境の変化を知ることにつながります。

(調査隊の詳細については「くにたち郷土文化館」 のHP参照)



◎≪ハケと用水がつくる≫里山だいすきガイドマップ◎

用水について学んだあとは、用水散策に出発。


ガイドマップには散策コースや見どころポイントも載っていますよ。

(発行)くにたち郷土文化館 定価200円


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【参考資料】 「くにたちの小さな仲間たち」(1991.3)

国立市動物ガイドブック編集委員会事務局 国立市教育委員会社会教育課

発行 国立市教育委員会



「春の小川の淡水魚―その生息場と保全」(2009.1.15) 2009年(平成21年)1月15日 編著 水谷正一・森淳

発行者 四戸 孝治

発行所 株式会社 学報社


・「多摩川中流域の『府中用水』に関する調査研究」 (研究助成・一般研究vo22-no)


「ハケと用水が作る」里山だいすきガイドマップ」(2010)

発行 くにたち郷土文化館 制作 国立歩記事業部

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(文:つじゆう)