Vol.21 ナス、水、田んぼのやさしい関係

かつて「谷保ナス」として有名だったように、谷保では昔からナスが盛んに作られていました。江戸時代には、近隣の宿場町に売りに出されていたという記録も残っており、農家の大事な収入源だったようです。保水性のいい土壌が、水と養分を多く必要とするナス作りに向いていたようです。

国立市でナスを栽培されている農家は大勢いらっしゃいますが、今回は少し変わった栽培方法をされている佐伯達哉さん(四軒在家地区)の畑を訪ねてきました。

 

 

なぜナス畑の隣は田んぼなの?

 

 

 

国立市泉にある佐伯さんの畑では、ナスと田んぼが隣り合っています。しかもその植え付け場所は、毎年交互に入れ替えられています。
今年米を作った場所は、来年はナス畑になるという具合で、これは先代のお父様が始められた栽培方法。ナスは水の好きな野菜ですが、この方法では隣の田んぼから水を引いてくることができるので、水不足に悩まされることはありません。
また、田んぼの年には土に水がはいるので、センチュウなどの害虫を駆除することができ、連作の害も軽減されるのだそうです。

 

「ただし、ナスによい作用をする養分もすべて無くなってしまいますけどね」と佐伯さん。
養分がなくなってしまうと大変じゃないですか!と思いきや、「土は水を入れることで養分も流れていったんゼロになるでしょう。だから入れる肥料はプラス分だけ考えればいい。昨年の肥料がどのくらい残っているかなど余計なことを考える必要がないんです」と涼しい顔で説明してくださいました。

 

佐伯さんが作るナスはなんと700本!

 

佐伯さんの畑で栽培しているナスは現在10種類、合計700本にもなります。そのほとんどが千両ナスですが、3年前からは“とげなし千両”という品種に。収穫の時にヘタのとげが手に刺さらない“農家にもやさしいナス”なのです。千両ナス以外には、白丸、米ナス、賀茂ナス、水ナス、しまむらさき、ロッサビアンコ、フローレンスパープル、白長ナス、タイナス。
しまむらさきは、今年の新種。ロッサビアンコやフローレンスパープルは見た目が美しいので、料理人からの注文も多いといいます。

 

 

※今年の新種、しまむらさき。

 

 佐伯さんがお父様から畑を継いだ時、周りの方からは1種類のナスを作るのがいいと助言を受けました。「でも自分が食べたいと思うものはやっぱり作ってみたいよね」と毎年新しいものにチャレンジされています。
そして疑問に思ったら調べるのが佐伯さんの基本。旅行ついでに、水ナスの栽培を本場京都まで視察に行ったこともあるそうです。

 

 

ナスの育て方へのこだわり

 

ナスを栽培するにあたって、何に気をつけているかをお伺いしました。

まず、苗が小さいうちに根を張らすこと。ある程度の大きさになるまでは、トンネルの中で育てます。
そして実がなり始めた最初の頃には、実を大きくしないこと。枝が実の重さで傷んでしまうのだそうです。
そして言うまでもなく、肥料と水を切らさないこと。ナスは肥料喰い。佐伯さんの畑では、牛糞と田んぼの米からとれた糠を混ぜて発酵させたものを肥料にしています。「千両ナスが畑の端から端までどれもおなじようにちゃんと育った時は、嬉しいですね。肥料が均等に入ったということですから」と佐伯さん。

みずみずしい賀茂ナス

そして、最後に気をつけているのが、花弁をできるだけ取り除くという作業。花弁が残ってしまうと、腐って虫がついたり病気のもとになってしまうのだそう。そして、早めに除去することでいい形のナスになります。佐伯さんが師匠と仰ぐ方の場合は、現役の頃、ひとりで1200本もの千両ナスの花弁を丁寧に取り除いていたとか。昔の人にはとてもかなわないね、自分はまだまだ及ばない、とおっしゃる佐伯さんです。

 

先日国立市にも降った大粒のヒョウ。大した被害はなかったものの、ナスの葉には穴が開きました(写真)。これから台風のシーズン。牛糞で育てたナスは2メートル近くの高さになります。もし風でナスが倒れたら大変ですね、と聞いたところ、「買う方のほうが、野菜の値段が上がって大変ですからね」と、やさしい言葉が佐伯さんから返ってきました。

 

 

   
 ヒョウで穴が開いたナスの葉  花弁はこうやって取り除いて・・・

 

佐伯さんの茄子も甘くて、やさしい味がします。

 

お求めは、以下の直売所にて。

 

こうやってつかめる鋏なんだよ~と、笑顔が素敵な佐伯さん。
(写真 ながむらゆうこ : 文 むらかみくみ)