Vol.12 谷保天満宮 1111年目の例大祭


2013年9月21日~22日。

今年は、谷保天満宮の1111年目の例大祭でした。秋晴れの空、気持ちのいいお祭り日和です。

朝から聞こえる祭囃子に浮き足立ちつつ、私は3人の娘たち(小1・年中・3歳)をぞろぞろ連れて、谷保天満宮の坂道を上ります。

去年の例大祭は大雨のため参加できず、その前は三姉妹が小さすぎて、お祭りの輪に近づけず。4月から子ども会に入った長女は、下谷保の手ぬぐいを頭に巻いて、意気揚々と先頭を歩きます。

途中ですれちがう、揃いの浴衣を着た大人たちは、いつもより大きな声で笑い、知らない同士もにこやかで、お祭りならではのすがすがしい空気が谷保天満宮のあたり一面を包んでいるようです。






谷保天満宮の祭神は、学問の神様菅原道真とその子道武です。当時、谷保に住んでいた道武は、父が大宰府で亡くなったと聞き、一体の木像を彫ってまつりました。これが1111年前のこと。谷保天満宮の始まりと伝えられています。


「万灯(まんどう)行列」 華やかに、厳(おごそ)かに


万灯とは、長い柄のついた四角い箱灯篭(はことうろう)です。谷保天満宮の万灯は、バレンという花の装飾をつけて傘のような形にし、持ち手の部分に「手隠し」という額入りの絵や文字を飾っています。

万灯には、小、中、大とあり、大万灯は100kgを超えるそう。それを、ひとりで持ち上げ、一歩ずつ地面を踏みしめながら谷保天満宮へと進む姿は、1000年以上の歴史をつなぐリレーのようにも見えます。

小万灯と中万灯は40kgから70kgくらい。こども万灯を用意している町会もあり、それは約10kg。「小学生なら持てるよ、持ってみる?」と聞かれた長女ですが、さっきまでの元気はどこへやら。こども万灯と言えども、小学校1年生には、やはり重厚感たっぷりに見えるのでしょう。来年に期待です。


10数個の万灯が連なる行列は、谷保駅ロータリーから約2時間かけて、谷保天満宮の鳥居をくぐります。通常なら歩いて15分程度の距離ですが、そう簡単には進みません。踏切と甲州街道の信号と路線バスとのすれ違いのタイミングが難しく、行きつ止まりつの道行(みちゆき)です。止まっている間は男衆の力自慢、技自慢の見せ場となり、万灯をぐるんぐるんと傘のように回したり、上下左右に振ったりして、沿道の観客を沸かせます。

この日の気温は30度。日陰を探しながら歩く私たちに、勢い余った万灯が倒れてきそうな場面もありました。万灯を支えるために駆け寄る、浴衣姿の男衆。絶妙の動きでセーフ!


万灯行列の最後を飾るのは、下谷保町内会壮青年部が振る106kgの大万灯です。

持ち手を握り、息を止め、ぐっと持ち上げると同時に、肩、腰、頬で重さを受け止めます。言葉通り全身で支えるその形相は、神々しさすら感じさせ、気づけば私も息を止めて見入っているのでした。

大万灯は、沿道からの喝采を浴びながら一歩ずつ、さらに時間をかけて谷保天満宮の鳥居をくぐります。






仲間に見守られながら谷保駅ロータリーを出発。






甲州街道を越えれば谷保天満宮の鳥居です。


「古式獅子舞」は、3匹の獅子の恋物語


すべての万灯が鳥居をくぐると、ササラ・金棒・拍子木童子・棒使い童子・天狗・獅子宿神主・笛・獅子・歌人の順番で獅子組が土俵に向かいます。棒使い童子は、小学生くらいの男児4名。童子たちはみんな、顔を白く塗り、目のふちには赤い隈取りをしています。肩車をされている拍子木童子の中には、すやすや眠ってしまった子もいて、厳粛な神事の中のほのぼのとした光景に、観客も思わずにっこり。


まず、棒使い童子の演舞で場を清めたあと、約40分にわたる獅子の舞が奉納されます。

獅子舞と言っても、その姿は、まさに異形。私たちのよく知る、赤い顔に緑の唐草風呂敷、口をパックンパックンさせる獅子舞とはずいぶん違います。

谷保天満宮の獅子は、外国の魔よけの置物のような風貌です。そして、長い鳥の羽を頭に飾り、胸の太鼓を叩きながら、片足で跳んだり、大声で叫んだりする激しい舞。3歳の三女が怖がるので、泣き出す前に、私はそっと土俵から離れることになりました。


そんな古式獅子舞ですが、実は、この舞は3匹の獅子の恋物語なのです。一匹の雌獅子を二匹の雄獅子が取り合い、天狗が仲を取り持って、めでたしめでたし。恋物語と聞くと、異形の獅子にも急に親近感がわきますよね。


さて、獅子舞奉納の後半。境内の、土俵から少し離れた場所で、わあっと歓声が上がりました。振り返ると、大万灯の解体が始まっています。傘骨のような形のバレンの竹は、箸にして使うと無病息災のご利益があると言われています。これがお目当ての方も多く、たくさんの観客が大万灯に押し寄せました。






宵宮獅子の様子。平安時代に、村上天皇が奉納されたと伝えられている獅子頭は、江戸時代に焼失し、3年かけて復元したものが現在まで受け継がれています。






縁起物とされる岩座の花に、手を伸ばす観客。


「獅子迎(ししむかい)の儀」と「宵宮参り」

獅子宿から、獅子を谷保天満宮にお連れする。








今年の獅子迎の儀の様子。前方の祭壇に獅子頭や衣装など一式がまつられています。






宵宮参り。夜8時頃、それぞれの町会の集合場所から谷保天満宮を目指します。


下谷保町内会では、今でも毎年9月15日に伝統行事として谷保天満宮参集殿にて「獅子迎の儀」を執り行っています。

ふだんは谷保天満宮の宝物殿に納められている獅子頭を「獅子宿」と呼ばれる獅子舞の稽古をする家に迎える「獅子迎の儀」。この翌日から、獅子組(獅子と笛など)の連夜の稽古が始まります。

昭和44年までは、甲州街道の東側にある佐藤家が獅子宿でした。獅子宿には、「獅子番」として谷保村の若者が毎晩交代で二人ずつ泊り込み、獅子の護衛をしていたそうです。現在は、谷保天満宮境内にある参集殿が獅子宿の代わりとなり、「獅子番」という制度はなくなりました。



例大祭一日目の夜は、「宵宮参り」です。翌日の本祭のために、獅子宿の獅子を谷保天満宮にお連れする氏子たちの行列のことで、「提灯行列」とも呼ばれています。

獅子は、高張提灯・ササラ・金棒などに先導されて鳥居をくぐり、氏子たちも、それぞれに提灯を持って列に続きます。そして、参道を下り、本殿を右回りに3周したあと、獅子の舞=宵宮獅子がお披露目されるのです。提灯のあかりの中で浮かび上がる獅子の舞を見ていると、過去にタイムスリップしたような、夢の中にいるような、不思議な気持ちになりました。



谷保天満宮例大祭は、毎年9月25日に近い土日で行われます。迫力の万灯と伝統ある獅子舞は一見の価値ありです。お住まいの町内会に入れば、万灯を振ることもできますよ!

今年、参加できなかった方は、ぜひ、来年をお楽しみに!




谷保天満宮や獅子舞のことをもっと知りたいあなた。こんなイベントもあります。

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郷土文化館 秋季企画展関連イベント


講演会「谷保天満宮獅子舞

~その歴史と伝承の様子~」
    

講師 津戸 最(谷保天満宮宮司)・谷保天満宮

   獅子舞保存会


実施日 12月1日(日)

時間  10:00~12:00

場所  郷土文化館講堂

定員  50名

参加費 無料

申し込み方法 11月7日(木)9:30より電話受付

お問い合わせは郷土文化館へ。
郷土文化館 042-576-0211

(文:小野 円/写真:ながむらゆうこ)